華道専慶流WEBいけばな講座 第20回
(05.2.27更新)
木蓮をいける(剣山二個の効果)
西阪慶眞指導

桜、桃、レンギョウ、梨、木藤、サンシュユ、マンサクなど主に花を観賞する木の事を総称して「花木」と云います。とくに春の花木は若葉を出す前に咲かせるため、裸木に花が付いた状態なのです。また、それらの幹は、花を見なくても木肌を見れば何の木であるか一目瞭然の質感を備えています。したがって、いけばなでの花木は幹の見せ方が重要となります。

ただ、幹の質感や個性が備わるには草花と異なり年数が必要で、さらに幹の面白い素材となると、自然環境が問われますが、近年「ひね」は激減しているのが現状です。「ひね」の場合は幹の曲がりや重厚さに目を向けていけば自ずと趣き深い作品になるのです。しかし、作例のような若い木には残念ながら自然が創り出す趣きは感じられません。

そこで、こうした若い素材では下記事項に注意して扱うのです。

○花そのものを見せる。
○花を散らばらさせるのでなく、寄せて扱う。
○真直ぐな、とくに太い幹は見せない。
○枝先ではなく、下に付いた横枝を重視する。
木蓮は横に広げる形を引き出す。
○少し小振りにいける。

作品拡大図参照

   花 型 現代花(直状)
  
花 材 木蓮(3〜4本)、彼岸桜(2〜3本)、チューリップ(5本)。
  
水揚げ 木蓮、桜は根割り。チューリップは水切。
        葉を使う場合、長い葉先は切って軽くする事。また、温かい手で長時間持たない事です。
  
花材費予算 1,200〜1,300円(2〜3月)
いけ方二個の剣山を使う)

 単調な若い幹の木蓮では、それだけでは力がありません。そこで幹を絡ませる事で1+1=2以上の効果を狙うのですが、単純に枝と枝を絡ませるだけでなく「立ちのぼる空間」の力を利用します。それが剣山二個を使う意味であり、横長の花器に二個の剣山を左右に広げて置き、左右の剣山から立ち上げ、下部に大きな空間をもたせながら上部で絡ませるのです。こうする事でひ弱な幹も力強い空間構成にささえられ、大きく開く木蓮の花を浮き上がらせる事ができるのです。
 なお、木蓮は横枝を左右、又は斜め方向扱いとし、左右に幹を伸ばす特性を捉え、力強さを増幅させて下さい。彼岸桜の幹は細く、枝も単調で趣はありません。ここでは短く下部にマッス的に配すことで木蓮とのバランスをはかっています。マッスと云ってもアレンジ花のように単に集合させるのでなく、各枝に長短と前後をつけ、まるで空気を含ませた綿のようにふんわりした集合を創り出すのです。
 そこへ黄色又は淡いピンクのチューリップをアクセントに配し、色彩効果をねらいます。チューリップを直接見せるのではなく、桜の間にしのばせ、間接的に見せます。こうすることで、桜の淡いピンクと混ざり合って趣ある雰囲気がかもし出されるのです。
ここではチューリップの葉は取り、純粋に春の花の競演をうたいあげています。

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